ハレノヒの哲学 — ハレの日とケの日のあいだに —
- halenohibasket

- 2025年11月30日
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神道には、「ハレ」と「ケ」という、日常と非日常を分ける考え方があります。
「ケ」はふだんの生活を、「ハレ」は特別な日やお祝いごとを意味します。
民俗学者・柳田國男は、この「ハレとケ」の習慣が明治以降の暮らしの中で薄れつつあることを指摘し、そこからこの言葉が広く知られるようになったといわれています。
ナンタケットバスケットは、アメリカ東海岸のナンタケット島で生まれた伝統工芸品です。19世紀、捕鯨で栄えた島の船乗りたちが、灯台船(ライトシップ)の上で手慰みに編んだのが始まりでした。もとは魚や道具を入れるための実用的な“日用品”。限られた材料の中で工夫を重ね、日常の中に美しさを見出していたのです。
やがてそのバスケットは島の文化として受け継がれ、生活の道具から、装飾が施された“ハレの日のバッグ”へと進化していきました。いまでは、パールのネックレスのように、結婚式などの特別な場にもふさわしい存在として愛されています。
典型的な「ナンタケットウェディング」では、花嫁の傍らに立つブライドメイドやフラワーガールが、お花を入れたナンタケットバスケットを手にしています。海風に揺れる白いドレス、光を受けて艶めく籠。その情景は、どこを切り取っても絵になる美しさです。
ナンタケットバスケットはまた、「社交界で唯一持つことが許されたバスケット」とも呼ばれています。格式を備えながらも、自然素材の温もりをもつその姿は、まさに“ハレの日”にふさわしいものといえるでしょう。
けれども私たちは思うのです。
このバスケットの魅力は、晴れやかな場面だけでなく、日々の暮らし――“ケ”の日――にも寄り添えることにあるのではないかと。
朝の光に照らされた木の艶、季節の花をひとつ入れるしぐさ。
そんな何気ない瞬間にこそ、心を満たす静かな豊かさが宿ります。
ハレノヒバスケットが目指すのは、ハレの日にはもちろん、ケの日にも、手にするだけで少し気持ちが前を向くような存在であること。そしてそのひとつひとつを、時間をかけて丁寧に仕上げる作家の手が、この小さな籠に確かなぬくもりを与えています。
特別な日も、いつもの日も、どちらも尊い。その“あいだ”にこそ、美しさは息づいている――。
それが、ハレノヒの哲学です。
記事引用:
明治大正史 世相編 柳田國男著 講談社学術文庫
OMOYA LAB「晴れとケのデザイン」
ZOFIA&Co. Nantucket Wedding at St Mary’s & The White Elephant, Leo & Sarah



