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ナンタケットバスケットの材料 〜籐(ラタン)について #2〜

  • 執筆者の写真: halenohibasket
    halenohibasket
  • 6月19日
  • 読了時間: 2分


マラッカ王国の位置(※1)
マラッカ王国の位置(※1)

世界に流通するラタンの多くは、インドネシアを中心とした東南アジアに自生しています。一方、ナンタケットバスケットはご存知のように北米・アメリカ東海岸に位置するナンタケット島で誕生しました。


日本やアメリカ北東部の気候では育たないラタンが、なぜナンタケットバスケットの主材となったのでしょう。


遠く離れた土地、そして異なる時代を越えて、このバスケットが形づくられた背景には、海を介して素材と文化が交差した歴史があります。日本では、奈良時代に遣唐使が中国からラタンを持ち帰ったとされ、正倉院には当時の籐細工が今も静かに保管されています。何世紀もの時を刻んでも、その素材の魅力は色褪せることなく、私たちに語りかけてくるようです。


さらに歴史を遡ると、古代エジプト王朝の墳墓からも、ラタン製の椅子や道具が出土しており、古くから世界中で生活に根ざした素材であったことがうかがえます。


一方、ナンタケット島では19世紀、捕鯨船が太平洋を横断する長い航海のなかで、マレー半島の交易港・マラッカに立ち寄り、ラタンを手に入れたと推測されています。興味深いことに、この「マラッカ」という地名は、英語で高級なラタンを意味する言葉として今も使われています。


こうした歴史をたどると、ラタンという素材が、悠久の時を超え、いかに世界の人々に愛され、暮らしのなかで育まれてきたかが見えてきます。まさに地球からの贈り物です。そうした素材の背景に触れることで、今手にしているバスケットが、単なる道具以上の存在として心に響いてくるのではないでしょうか。

※1図出典:永積昭『アジアの多島海』世界の歴史13 1977 講談社 p.121 参考資料;世界史用語解説授業と学習のヒント マラッカ王国 /マラッカ

 
 

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