モールドという世界 ~ナンタケットバスケットの木型について ~
- halenohibasket

- 9 時間前
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オーダーをお受けする際に、「どんな形があるのですか?」と聞かれることがよくあります。ナンタケットバスケットには多くの形や大きさがあるため、イメージしやすいように、インスタグラムでは実際に使用している雰囲気が伝わる写真をできるだけ多く掲載するよう心がけています。
ナンタケットバスケットには「モールド」と呼ばれる木型があり、その種類は実に豊富です。
例えば、そのまま形を表すものとしてラウンドやオーバル。ほかにも、ウォーウィネット、ビスコッティ、ドッグマギー、タッパーズ、カクテルパースなど、さまざまな名前のモールドがあります。
名前を並べてみるだけでも、どこか物語を感じる響きがあります。
ウォーウィネットはナンタケット島の地名。ビスコッティはイタリアのお菓子。ドッグマギーは作家の愛犬の名前でしょうか。
形の名前には、土地や暮らし、人の記憶が残されています。それもまた、ナンタケットバスケットの魅力のひとつです。
さらに興味深いのは、同じモールドでもインチが変わると印象が大きく変わることです。
アメリカではサイズの単位としてインチが使われています。ほんのわずかなサイズの違いでも、小さなものは愛らしく、少し大きくなるとエレガントに、さらに大きくなると実用的なバスケットとして活躍します。
同じ形なのに、まるで別のバスケットのようにも感じられます。
こうして多くのモールドが生まれてきたのは、それだけ長い時間、バスケットが人々に親しまれ、愛されてきたからなのかもしれません。
では、このモールドという発想はどこから生まれたのでしょうか。
ナンタケット島は、かつて世界有数の捕鯨の拠点でした。捕鯨船では、鯨油を保存するための樽が使われていました。その樽を作る職人は「クーパー」と呼ばれる樽職人です。
樽は、木の板を曲線に組み上げ、鉄の輪で締めて形を整えていきます。そこには、木を扱う高度な技術と、形を整えるための木型の発想がありました。この樽づくりの技術が、ナンタケットバスケットのモールドへとつながったと言われています。
さらにその前には、この島にはバスケットを作る人はおらず、アメリカンインディアンが作った籠を交易によって入手したり、本土からもたらされたバスケットを使っていたと言われています。
籠は島の暮らしに欠かせない必需品でした。そこに樽職人たちが自らの技術を活かし、バスケットを作り始めたのではないかと想像しています。そして作り手たちは、少しずつ形を変えながら、新しいモールドを生み出してきました。
丸みを少し変える。
高さを変える。
サイズを変える。
その小さな探求の積み重ねが、今日の豊かなバスケットの形につながっています。
モールドを知ることは、ナンタケットバスケットの歴史を辿ることなのかもしれません。
そしてパーティーの場では、その小さな物語がふとした会話のきっかけとなり、バスケットは静かに人と人をつないでくれます。

